『ズートピア』と見る

『ズートピア』を見たあとに見たい映画一覧

一部コラムやインタビューで言及されているもの、スタッフやキャストの関連作を見てみたいので、自分用メモをかねて作成しました。

  • リッチ・ムーア監督 『シュガー・ラッシュ』 → 初期設定『ズートピア』を考えるための鏡  
  • ジェイソン・ベイトマン主演 『モンスター上司』1、2 → 男3人悪だくみ。ベイトマン演じる「ニック」が主人公!
  • ジェイソン・ベイトマン主演 『泥棒は幸せのはじまり』 → 実は『ズートピア』と通じるストーリー。【ネタバレ注意】
  • 0703 ジェイソン・ベイトマン主演 『ディス/コネクト』 → もはや『ズートピア』とはなんの関係もない!

『シュガー・ラッシュ』

 ※ 『シュガー・ラッシュ』のEDの方向性に触れています。
 2018年3月9日に『2』が公開されることが発表されました! ありがとう!

郊外のゲームセンターを舞台に、レトロゲームの悪役「ラルフ」と、レースゲームのキャラクター「ヴァネロペ」の出会い、友情を描いたストーリー。
『ズートピア』の2人目の監督リッチ・ムーアと、製作クラーク・スペンサーの作品で、公開当時からおもしろいと話題だったので期待して見ました。

● 『ズートピア』と似ているところ
自らのゲームの中で30年間「悪役」を演じ続け、友人もおらずがれきの山で暮らしパーティにも呼ばれない、嫌われものの主人公「ラルフ」は、『ズートピア』に失望しきっているために、観客に『ズートピア』が魅力的な街だと伝わらないと否定されたという、初期ストーリーのニックを思わせます。

ラルフが出会う、少し生意気な女の子「ヴァネロペ」の弁の立つところ、意志の強いところ、彼女の意志の強さに打たれ、根がやさしいラルフが彼女を手助けしてしまうところ、2人の間に確実な友情が芽生え、お互いがかけがえのない存在になるところは『ズートピア』に共通する点だなと思いました。

● 『ズートピア』と違うところ
『ズートピア』の最大の特徴である、執拗なまでのシーン/エピソード間のリンクは感じられませんでした。作り方や考え方が違うのだと思います……。

ラルフがもっさりとした大男であること、ラルフとヴァネロペの設定年齢の差が外見的に明らかであることから、2人のあいだのロマンスが想像しづらく、友情の物語としてシンプルに楽しみやすいです。ロマンスの部分は、ラルフのゲームの主人公「フェリックス」と、偶然この事件に巻き込まれたFPSゲームの高解像度女軍曹「カルホーン」が担います。

主要4キャラクターのうち、3キャラクターのバックボーンが暗く、悲しい過去の描写やラルフがヴァネロペの車を壊すシーンなど、悲劇的なシーンの演出に容赦がありません(『ズートピア』にも、ニックの過去シーン、会見のシーンなど悲しいシーンがありますが、どこかにやさしさがある気がします。何が違うのか考えてみる価値がありそうです)。
心が疲れているときに見るとうちのめされるので、ご注意ください。

持ち前の優しい性格とは無関係に、理不尽に周囲から否定されていて、のちに相棒となるキャラクターを手助けすることにより自身が救われていく側のキャラクターが視点人物に設定されている点が『ズートピア』との最大の相違点です。ある意味ラルフはもうひとりのニックであり、ラルフの視点で展開するこのストーリーを見ることが、ニック視点の『ズートピア』の理解の助けになります。

『ズートピア』のEDで、ニックは自分自身の人生の軌道を変更し、ジュディと同じ場所に立つことを選択しますが、ラルフは自分自身の人生のあり方を見直し、ヴァネロペとの出会いを胸に元の場所へ帰ることを選択します。これは『ズートピア』であり得たかもしれないEDの方向性のひとつで(少し違いますが「あなたは弁護士に向いてるわ」と言われて、弁護士になるなども)、あらためて、そちらを採用したらどうなるのか、ということについて考えさせられました。


● 見終わって
ソニック、クッパ、ストIIキャラなどの登場や、ラルフのゲームのモブたちのフレームレートの少なさなど、細かいところまでこだわりがあり、ストーリーも感動的な良作でした。『ズートピア』との比較で見るといっそう魅力的なので、一度見た方も、もう一度見てもおもしろいのではないかと思います。ぜひ。


2016.7.1追記
2016.6.20執筆

『モンスター上司』

ジェイソン・ベイトマン主演 1→2011年 2→2014年 アメリカ

『ズートピア』を見て、ニックがかっこいい……と思ったときに、声がその原因として大きい気がしたので、わりとすぐに見ました。1はまちがいなくオススメ、2は見る前に心の準備を。

  • ジェイソン・ベイトマンが「ニック」役で主演のコメディ映画

エリートサラリーマンのニック、中小企業に務めるカート、歯科助手として働くデイルの3人は、それぞれ常軌を逸した「モンスター上司」の存在に悩まされていた。バーに集まって近況を報告しあう3人は、平穏な毎日を手に入れるためそれぞれの上司を「排除」する計画を思いついて……というストーリー。

マッチョですぐそこらへんの女性とセックスしてしまうカート、婚約者とのスイートな結婚生活を夢見る少しひょうきんなデイルと比較して、ベイトマン演じる「ニック」は3人の「頭脳」であり、「ストッパー」です。
そのため『ズートピア』のニックとは違い、笑顔も少なく、どちらかというと「おもしろみのない男性」という印象ですがそれはそれで!

個性豊かな上司の面々や、犯罪指南役のMF(ヒドイあだ名です)らの登場シーンはとにかく笑えますし、アドリブ続出のメイン3人がとてもチャーミングです。

ストーリーの重要な局面で『ズートピア』との偶然のかぶりを見つけることもできるかもしれません。ベイトマンほんとかっこいい……、というすべての女性にオススメです。

※『モンスター上司2』もとてもおもしろい作品でしたが、ニックが変な女にひっかかります。(怒)

2016.6.25執筆



『泥棒は幸せのはじまり』

ジェイソン・ベイトマン主演 2013年 アメリカ
※ 身もふたもないネタバレをしています。

  • ラストは意外と感動できるベイトマン主演のコメディ映画

「バディムービー」……という言い方はちょっと適切ではないかもしれません。「ロードムービー」ではあるかもしれない。
ベイトマン演じる主人公のサンディは、3人目を妊娠中の美しい妻と、2人の幼い娘とともにつつましく暮らす幸福なサラリーマン。しかし詐欺師のダイアナのターゲットとなり、個人情報を盗まれてしまいます。

サンディになりすましたダイアナの悪行により、多額のカード支払と逮捕歴をつけられてしまうサンディ。出頭命令に従わなかったとして警察に連行されたサンディは自らの身の潔白を訴え、地元コロラド州の警察には一応の理解を得るものの、州をまたいでいるためフロリダで好き勝手をしているダイアナを逮捕してもらうことができません。

警察の出入り、カード支払のこげつきから、転職のチャンスをつぶされそうになったサンディは 1週間の期限付きで、コロラド(アメリカの真ん中)からフロリダ(右下)まで、ダイアナを捕まえ、コロラドに連れ帰るための旅に出ます。

その写真を見たサンディが「ホビット」と称した詐欺師の女性・ダイアナは小柄でふくよかな体型に派手な化粧、陽気な性格の、絵にかいたようなおばちゃん。
おどしたりすかしたりして、なんとかダイアナを確保し、車に乗せることに成功しはするものの、ダイアナは下品なジョーク飛ばしまくり、サンディ嫌な顔しまくり、道中は決して楽しいものではありません。

しかし、意外や意外、本作は、 
敵対関係にある男女が、
限定された時間のなかで行動を共にするうちに信頼関係を育て、
詐欺師が自らの人生の針路を変える感動作 なのです。

お気づきでしょうか。
この説明文の範囲内において、本作は 『ズートピア』と同じ 筋書きの映画なのです。

(しかも作中には、レインフォレストでニックがジュディに向かって放った "You saved my life." とほぼ同じセリフが登場します。ぜひ探してみてください)

実はこの構造は『ズートピア』だけではなく『塔の上のラプンツェル』、『シュガー・ラッシュ』の2作とも共通する部分があります。この3作の共通点はまた別途書ければと思います。


  • 『ズートピア』との相違点など
前述の三作では、目的を持った主人公が 利用価値のある相棒に協力を要請 しますが、本作では、 相棒であるダイアナ自身の行動の抑制が目的になっている 点が最大の相違点です。

また、協力を求める際に前述の三作のように人質(ペン、王冠、メダル)を取らないので、 ちょっと目を離すとダイアナが逃げて行ってしまいます。 このしっちゃかめっちゃかな展開もコメディ作品としての本作の魅力です(さらに、拘束力のない約束であるにも関わらずダイアナが自分の意志で「逃げない」ことを選択しているシーンには心を打たれます)。
二人にロマンスが生まれないように
男性を既婚者、女性の外見と性格をセクシーとは言いがたいユニークなものに設定している 点もポイントです。

恋愛関係ではなく信頼関係が育っているとシンプルに感じられる一番の理由はサンディ(男性側)が既婚者で、家族を守るためにダイアナに協力要請をしているという軸がブレないからですが、ダイアナの個性的な外見とあけすけな性格が、彼女をまったくセクシーに見せないのも、大きな理由の一つになっています。

実は『シュガー・ラッシュ』のラルフの時も思ったのですが、片方にセックスアピールがないから2人の間にロマンスが育っているように見えない、というのは、美しくもなんともない私にとってはビミョーに笑えない話でもあります。
ただ、道中で黒いワンピースに着替え美しいメイクをしたダイアナを、サンディが素で「キレイだ」とほめてしまうシーンがあり、美醜も努力次第、気の持ちようであるということを教えられたような気にもなりました……。

話がそれましたが。

  • 最後に
『ズートピア』がそうであったように、サンディと行動を共にするうちに、ダイアナは自身の心の奥底にあったわだかまりと自ら向き合うようになり、詐欺師としての人生を清算することを決意します。登場人物が人間、舞台が現代アメリカであるだけにその清算の方法は『ズートピア』よりシビアでビターです。
しかし、だからこそ ニックの決意が感動的であったように、ダイアナの決意もまた感動的 であり、彼女をサポートするサンディの行動にも胸を打たれます。

ここまで書いちゃったあとで「見てね」もクソもありませんが、よかったらぜひ……。前半本当に下品でサンディ(ベイトマン)が気の毒ですが、後半では心地よい涙を流している自分を発見できる……かも……しれません……。


2016.7.1忘れてたセリフを追加
2016.6.29作成


『ディス/コネクト』

ジェイソン・ベイトマン主演 2012年 アメリカ 115分

"Disconnect"は「接続を断つ」という意味の言葉。原題にはスラッシュは入っていないようです。大変シビアな展開のガチの映画でした。現在、心が不安定な方、感受性がいつもより豊かになっている方にはオススメできません。

舞台はアメリカのどこか。映画のキーになるのは インターネットを介して出会う3組のカップルと、彼らの家族、その協力者 です。

・子どもを失い、夫との冷え切った関係に絶望する主婦と、妻を失った男性。(テキストのみのチャット)

・音楽を愛する内向的な少年と、彼をからかう目的で他校の女子生徒になりすました少年たち。(偽のプロフィール写真を出したFacebook的な場でのメッセージのやりとり)

・セクシーな動画チャットで生計を立てる少年と、彼のドキュメンタリーを作ろうとする野心あふれる女性リポーター。(互いに顔を出しての動画チャット)

スマホやモニタの向こうに現れる 自分のコミュニティに属さない個人との出会いは、孤独な彼らの心を開きます。 家族や友人に伝えられない思いを交わすうちに、彼らは相手をかけがえのない存在だと感じるようになり、弱みをさらけ出してしまいます。

(彼らにはニックの1つめのアドバイス "Never let 'em see that they get to you." を送りたいですが、考えてみればニック自身そのスタイルを貫き通すことはできなかったのでした)

インターネットに潜む悪意は、弱みを見せた彼らに容赦なく襲い掛かります。現在の生活、財産、自らの命を守る意思。かけがえのないものを彼らは奪われ、最悪の状況に直面します。
どん底でもがくうちに、彼らとその家族、友人は、自分たちの生活のなかに欠けていたこと、自分の隣人をハグし「愛している」と伝えることの大切さを思い知らされることになります(ベイトマン演じるお父さんは、本当になかなか気が付きません)。


  • ベイトマンはどうだったか

さて、ベイトマンは「主演」扱いのようで、確かに存在感もありましたが、上記「音楽を愛する内向的な少年(たぶん高校生……?)」の父親役ですので 画面に出ずっぱりではありません。

しかし弁護士でハイティーンの2人の子どものお父さん役ということで ひげを生やし、髪型も少し落ち着かせた様子 は、『モンスター上司』(独身)や『泥棒は幸せのはじまり』(10歳以下の娘2人の父)に比べても 少し年齢が高く見え、また魅力的です……!

息子をだまし自殺に追い込んだ少年と、それと気づかずに会話をするシーンなど、本当に父親らしいやさしさが出ていてステキでした。しかもこの 息子をだました少年が「ジェイソン」、ベイトマン演じる父親が「リッチ」というファーストネームだった のも、『ズートピア』ファンとしては見逃せない符丁でした。

さらにどうでもいい話ですが、チャットをしていた主婦は『泥棒は幸せのはじまり』同様、カード詐欺に引っかかりました。こちらでも被害者は現地警察の対応を祈るか、自ら行動を起こすしかない、という様子が描かれ、アメリカのカード詐欺被害の深刻さを思い知らされた気分でした。

  • 映画の教訓/痛すぎる自分
『ディス/コネクト』が教えてくれるのは、
現実の生活圏にいる例えば家族や友人との関係が私たちを満たしてくれない場合があること。
回線の向こうにいる相手から、私たちが救いを得る場合があること。
しかしそれを過剰に信頼してはいけないということ。
そしてなにより、隣にいる大切な人間をハグして離してはいけないということ です。

これはですね……
『ズートピア』を見て1.5か月 ツイッターに貼りつきっ放し、いただくリプに一喜一憂、文字量の限られたリッチやバイロンのツイートに思いをはせ、リアルな友人には明かさない内面をダダもれにしている 私には 「焼きゴテで心臓に書いておいてあげるね、ジュッ」ギャー! みたいな、大変痛い話です。

ここまで読んで思い当たることのある方はぜひ お隣にいる大切な方をハグして「あなたは大切な存在だ」と伝えてあげてください。

お付き合いありがとうございました! m(_ _)m

2016.7.2作成



ほか、未見のもの

塔の上のラプンツェル バイロン・ハワードつながり。先週見たのですが、あまりにもおもしろかったので、コメント保留になっています。
101匹わんちゃん 町山さんのラジオを聞いて。
ロビン・フッド キツネつながり。
ゴッド・ファーザー Mr.ビッグつながり。冒頭1時間見ましたが、寝落ちします。
ブレイキングバッド 夜の遠吠えつながり。見たいです。
リブート版スタートレック ニックのミドルネームつながり。ツイッターでオススメ拝見して。 https://twitter.com/omimochi/status/741801036952653824
関係ないけど、グッドウィルハンティングもう1回見ること
あとラスト・サムライ

  • 最終更新:2016-07-03 17:21:08

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