『ズートピア』と読む

『ズートピア』を見た後で読むと楽しめる本をご紹介します。基本図書館で借りてきたものです。

『ズートピア』をより知る

密着!動物たちの24時間 サバンナの水場編

小宮輝之日本語版監修 汐文社 2,800円(税抜)

AB版変型 48ページ よくある大きめの絵本のサイズ。

ビジュアルガイドに掲載された 共同監督ジャレド・ブッシュ のインタビューで、彼らはアフリカ旅行で見た水場にいる動物たちの様子から大きなインスピレーションを得たと語っています。

そこには、ありとあらゆる捕食動物と非捕食動物が集まり、さながらサバンナ・セントラルのようにすべての動物が共存しています。サバンナの水場の様子は「ズートピア」という都市のイメージの源泉と言えそうです。

ズートピア精神の体現者ともいわれるガゼルが、ニュースで語ったスピーチでもそんなズートピアのありようが語られました(こちらのセリフ シネストーリーコミックからの抜粋ですが、映画の当該シーンとノベライズには収録されていなかったようでした。急いで確認したので見落としかもですが……)。

This is the watering hole zootopia evolved from.
We should drink from its waters togeter -- in unity and harmony.
「ここは(?)ズートピアの発展のもとになった水場です。
 私たちはその水を協調し、調和しながら飲まなければなりません。」


そんな、サバンナの24時間を定点観測できる絵本がこちら。
とある水場を舞台に、朝6時から夜10時まで、サバンナの遠景を定点撮影し、そこに集まるゾウやキリン、ライオン、シマウマ、サイ、ホロホロチョウなどの生活の様子を紹介しています。

見開きいっぱいで掲載されている水場の写真には、さまざまな種類の動物が思い思いに集まる様子が写し出されて まさにズートピア状態。

同時間帯の周辺の動物の様子を詳細に説明してみせる豆知識いっぱいの内容は、見ているだけでも楽しめます。(キリンが水を飲むのはとても大変、とか、肉食獣は涼しくてかつエサが油断している夜に活発に活動する、とか)

小学校中級~中学校対象とのこと。オススメできる1冊でした。

なお、横浜にある動物園ズーラシアには、チーター、キリン、シマウマが柵なしで1つの場所に暮らすサバンナエリアがありまして、私が行ったときはチーターがシマウマに追いかけられていました。そちらもぜひ。

なお、同シリーズ『サハラ砂漠編』では、ドルカスガゼルやフェネックの様子も見られます。
そういえばこちらの本にもあるように、フェネックは砂漠に住んでいるのでした。
アカギツネは当たり前に日本にも住んでいますので、暑さにはそれほど強くなさそうです……。

サハラスクエアでアイスを溶かしているときも、もしかすると、ニックはすごく暑くて、フィニックは全然平気なのかもしれません。

2016.7.30追記
2016.6.28作成


キツネをより知る

キツネを調べよう (身近に体験!日本の野生動物)

文・絵・写真:熊谷さとし 偕成社 2006年 2,500円(税抜) ※おそらく絶版

「野性動物の観察はいつだって、ドキドキワクワクするけれど、キツネが出てきてくれると、その美しさとかっこよさに、つい見とれてしまう」という右ストレートな書き出しの良書中の良書。

学習漫画家として活躍する著者(1954年生まれ)自身によって描かれた多数の、時にユーモラスなイラストと写真ともにキツネの生態が紹介されています。

キツネの体つきや、里での人間とのかかわり、狩の様子、足跡(意外と縦に長く、指4本 → 肉球の2列ではなく、第2、3指 → 第1、4指 → 肉球と縦に3列に分かれている)やフンの特徴、巣穴のまわりに落ちているゴミ(子ギツネのおもちゃ)や季節ごとの暮らしなど、すべてのページが興味を引く情報でぎっしり埋め尽くされています。

ちょこっとですがノウサギの紹介もあります。

10年前の本ということで、残念ながら絶版のようで、現在偕成社サイトの書籍検索でもヒットしません。図書館や古書店にはあるようですので、ぜひ探してみてください。

2016.7.7作成


北国からの動物記 キツネ

文・写真:竹田津 実 アリス館 2008年(新装版) 1,400円(税抜)

2歳の母キツネ「トウ」の一年を写真と文章でつづった観察記。

獣医師/写真家でもある著者(1937年生まれ)は「キタキツネ物語」「子ぎつねヘレン」など、映画も有名な作品の企画や原作を担当しているプロ中のプロ。ながく北海道の農協家畜診療所に勤務したというその確かな観察眼で、キツネ親子の一年の暮らしを情感たっぷりに綴ってくれています。

2歳のメスギツネ「トウ」の、冬の恋、4月の出産、父ギツネとともに行う子育て、オス2匹、メス2匹のかわいい子ギツネたちの様子は必見。

本書の解説で知ったのですが、父親が家庭の子育てに参加する動物は、人間、キツネ、タヌキの3種のみとのことです。
自分のとってきた餌を喜ぶ子ギツネの様子を見た父ギツネが「耳をピッと立て胸をグッとつき出してしっぽをゆっくりと左右にふります」と紹介されていたくだりには 未来のニックを見た気がして 萌えが止まりませんでした。

さらに 子ギツネ2匹が並んでいる写真が、『ズートピア』本編中のちびニックにそっくり である点も見逃せません……!

秋に訪れる子離れの様子はショッキングですらあります。

キツネの生活を知るための一冊です。
父キツネにニックを投影できるとなお萌えます。

2016.7.7作成


科学のアルバム 森のキタキツネ

著:右高英臣 あかね書房 1983年 1,620円(税抜)

こちらも、特定のキツネの家族の一年を写真と文章で追った書籍で、コンセプトは前述の「北国からの動物記」と同じです。
著者は1943年生まれの写真家。北海道、旭川地方の森でキタキツネの親子の日常を観察します。

『北国からの動物記』と違うのは、こちらの一家の方がずっとシビアな生活を送っているということです。
母ギツネは右前脚の足首から先を失っており、3本の足で不規則な足跡を残して歩きます。
父ギツネも子育てに参加しておらず、オス4匹、メス1匹の兄妹を母ギツネが1匹で育てています。


『北国からの動物記』との比較で読むと、キツネにもいろいろな家族がいるんだな。ニックの家もお母さんひとりで大変だったろうな、ということが実感できる内容です。

2016.7.7作成



童話に見るズートピアン

わすれられないおくりもの

著:スーザン・バーレイ 評論社 1,200円(税抜)

イギリスのお話。

ものしりでやさしかったアナグマを見送った仲間たちの物語。
穏やかにその生を終えたアナグマ、本人は何一つこちらに未練を残しませんでした。しかし残された仲間たちは彼を失った悲しみにしずみます。仲間どうし語り合ううちに、彼らはより深くアナグマを知り、自分のものとなった悲しみと静かに向き合うことができるようになります。

名作中の名作なので、解説もおこがましいのですが 途中で出てくる「ネクタイを結べるようになったキツネ」が、なんだかとってもニックです。だってネクタイをしてるんですよ……。
しかもやっぱりアナグマと友だちなんです。なんだろう、日本でいうところのタヌキみたいな存在なのでしょうか。

リンク先は絵本ナビなのですが、うっかりキツネのページが見られてしまいます(ちびニックちゃんとおじニックさんに見えます……)。

この物語の中では、キツネもアナグマを愛した野原にすむ動物のうちのひとりでしかなく、ウサギやカエルと一緒にアナグマの死を悼んでいます。

英語圏でのキツネがいつも仲間はずれにされているわけではないんだな、と少し安心できる物語です。

2016.9.1更新
2016.6.28作成

キツネどんのおはなし (『愛蔵版 ピーターラビット全おはなし集 改訂版』より)

作:ビアトリクス・ポター 訳:いしいももこ まさきるりこ なかがわりえこ 8,500円(税抜) 福音館書店 2007年

イギリスのお話。

「ピーターラビットの絵本」シリーズの全編がまとまったという豪華本から「キツネどんのおはなし」のみ読みました。
ビアトリクス・ポターについて全く知識がないのですが 「キツネどんのおはなし」だけピックアップして読んでも楽しめました。

「わたしは、これまで、おぎょうぎのいいひとたちのおはなしばかり かいてきました。そこで、こんどは 気をかえて、ふたりの いやなひと――アナグマ・トミーとキツネどんのおはなしをかいてみようとおもいます。」
から始まる物語。

前提としてすでにキツネどんとアナグマ・トミーは「いやなひと」なのです……!
ウサギが主人公だから仕方ない……! 
ですが、読み進めていくと この本に限って言うと、キツネどんは全くわるいことをしていない ようにも思われます。アナグマ・トミーに好き勝手されて、報復しようとしてるんだけど、特に悪いことはしていない。
報復の手段が姑息で「いやなひと」なのかもな、とは感じますが。

巣穴を複数持っている点、巣穴にウサギの足が落ちている点など、キツネの描写は、これまで他のキツネ観察本で学んだ内容と一致しており、動物の様子をよく観察していたというポターの視線を感じます。

そして、キツネどんのファッションですが おしゃれなジャケットにニッカボッカ風のズボンを合わせ、杖をついていて小粋 ですらあります。『わすれられないおくりもの』のキツネもこういうズボンを履いていましたが なぜスネから下を出す判断になるのかは気になるところ (ピーターやベンジャミンが「履いてない」点に比べると、履いているだけマシともいえそうですが)。

翻訳者のまさきるりこさんについては不勉強で存じあげなかったのですが、いしいももこさんは当然として、なかがわりえこさんも翻訳をされていたのは今回初めて知りました。8,500円と高額ですが、手元に置いて全部読みたい。
とてもほしい本に出会ってしまいました。

2016.7.10作成


きつねのとうさん ごちそう とった

作・絵:ピーター・スピアー 訳:松川真弓 1,300円(税抜) 評論社 1986年

the fox went out on a chilly night という歌の歌詞に絵がついた絵本です。

絵本自体の奥付はニューヨークなのでたぶんアメリカの絵本なのではないかと……。またこちらのYoutubeの紹介文には、イギリスとアメリカの童謡とありますので、イギリスでも歌われている曲ではないかと思います。

寒い夜にごちそうをつかまえに行く「きつねのとうさん」の愛らしい表情が素朴な詩とともに描かれており、読んでいるだけでやさしい気持ちになれます。

キツネは普通に全裸の動物スタイルですが、おうちには椅子やクッション、お皿、ろうそくなどが描かれ、大変居心地がよさそうです。ただ建物を建てるスタイルではなく、土手に穴を掘って作ってある点は、実際のキツネの巣穴の様子に近そうです。
子ギツネが10匹確認できますので、かなりの大家族といえそう。

キツネとは全く関係ありませんが、作中の景色に描かれた多くの人名や屋号を日本名に変更して日本語で書いてある点もおもしろいです。きのしたひばぐや やまなかしょうかい お墓には おさらぎじろう つづきみちお ほししんいち つついやすたか など比較的最近の方のお名前も確認できます。

「きつねのとうさん」は愛情ぶかい家族の大黒柱として描かれており、その狩りのようすは楽しげです。人間の家畜小屋から鴨とあひるを獲ってましたので、人間には迷惑な存在であることは変わりなさそうですが、家畜をアレしていてもなお、愛すべき動物として描かれているようすには少し安心もしました。

家族のためにごちそうをつかまえた「とうさん」のうれしそうな笑顔は一見の価値あり。
またオスが子育てに参加する数すくない哺乳類の1として知られるキツネの特性が愛情たっぷりに描かれている点でも、一度手に取っていただきたい一冊です。

2016.9.1作成

きつねのホイティ

さく:シビル・ウェッタシンハ やく:まつおか きょうこ 1300円(税抜) 福音館書店 1994年

スリランカ生まれの著者による絵本。物語の舞台もスリランカの小さな村です。

村に暮らすアンゴウさん夫妻が食べている "ほかほかのごはんに、ココナッツミルクでにたやさいのカレー、とうがらしであじつけしたさかなのフライ……" (マジうまそう) が羨ましくなったきつねのホイティは、人間に変装しておもてなしをしてもらう作戦を立てます。

物干しにあった洗濯物を身に着けると なかなか見事な変身ぶり。 アンゴウさん(ご夫人)は気づかずにご飯をふるまってしまいます。しかし、ホイティがおじぎをした瞬間にはみ出した ふさふさのしっぽ を見て、その正体に気づきます。アンゴウさんが、ホイティをこらしめるのではなく 「おもしろいから気がつかないふりをしよう」 とホイティを泳がせるのが、この絵本のおもしろいところ。
調子にのったホイティの様子、アンゴウさんほか村のご夫人がたが、いかに彼をこらしめたかは絵本でご確認いただくとして……

スリランカでキツネがどのような存在なのか、この絵本からだけでは何とも言えないのですが、ご夫人がたをだましてごちそうしてもらおうとしていることから、 多少ずるがしこい存在 という印象があるのかもしれません。

最初のページの見開きでは、 村の中に鶏小屋が確認できますので、やはり欧米同様家畜を狙う、困った存在 なのかも? という推測もできます。

ですが、 ご夫人がたをだますホイティの様子や、彼女たちがとった「こらしめ」の方法はとても愉快でやさしく、見ていると陽気な気持ちになれます。

翻訳は「パディントン」「うさこちゃん」などで知られる松岡享子さんによるもの。ピンクのショールをかぶったホイティの様子もとても愛らしいので、機会がありましたらぜひ手に取ってみてください。


2016.7.17作成


[ロシアの昔話]きつねとうさぎ

絵:F・ヤールブソワ 構成:Y・ノルシュテイン 訳:こじまひろこ 福音館書店 2003年 1,200円(税抜)

ロシア生まれモスクワ在住のアニメーション作家ユーリー・ノルシュテインが1973に発表した同名アニメーションを題材にした絵本。

赤毛のキツネグレーのウサギのコンビは、ニックとジュディを思わせます! が キツネが女性、ウサギが男性 です。

冬の間すてきな氷の宮殿に住み、自分の家を自慢していたキツネ。なのに春が来ると彼女の家は溶けてなくなってしまいます。
困ったキツネはウサギの家を横取り。家を追い出されたウサギが泣きながら歩いていると、さまざまな動物が「家を取り戻すために協力する」と声をかけてくれます。

これが笑っちゃうんですが、声をかけてくれる動物が、おおかみ水牛だったりするんですね。 ZPDメンバー総出でキツネをどうにかしようとする。結果は絵本にてご覧ください。

本書では、キツネは悪役。しかも大型の動物をもってしても、その傍若無人ぶりを止められない確信犯の厄介者として描かれています。
特徴的なのは、本作の キツネがメス であることです。
なぜかこれまでの作品ではすべてキツネはオスの設定になっています。

ウサギはレインコートのようなかわいいシャツと長靴を履いているのに、キツネはなぜか上裸でスカートしかはいていない のも気になりました。その他のZPDメンバーは全裸です。

ウサギしょっちゅうニンジン持ってるのもかわいかったです。

上記のURLで一見開き中身が確認できます。力のあるイラストがとてもすてきな絵本なのでぜひ手に取ってみてください。

ZBT04.jpg

2016.8.6作成

  • 最終更新:2016-09-01 02:48:25

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